ありふれた恋でいいから
「順番は狂ったし、その後ミキ元気無いし、失敗したなと思ってたんだけど、付き合って欲しいってダメ元で告白したらさ、意外にもOKで」

けれど嬉しそうに吉田との馴れ初めを話すコウの言葉は恐らく真実で。

欠落した自分の記憶とその真実の間に潜むありえない共通点に気付いた俺は、次第に回りだす思考に、ぐらぐらと目眩を感じた。

呼吸が、浅くなる。
血の気が引くって、こんな感覚なんだろうか。

知らない方がいいかもしれない。
世の中には知らなくてもいい真実があるのかもしれない。

なのに、俺は。

「…じゃあ、あの、キスマークって……」



手にかけたパンドラの箱を、開かずにはいられなかったんだ。
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