“毒”から始まる恋もある


それから、二週間が過ぎた。

光流の言った通り、私達は時間が合わない。
彼の休みは定休日の火曜日と、他に平日の何処かで、私の休みは週末のみ。
真っ当なデートなど、火曜日の私の仕事終わりからしか出来ず、できるのはせいぜいレイトショーを見るくらい。

でも時々、昼休み目がけてメールをくれる。

大抵、今日は午後からだから一緒に食べようとかとかいう内容で、おみやげにとお野菜を煮込んだようなものが入ったタッパを渡される。


「野菜、とりにくいでしょ?」

「まあそうなんだけど。貴方お母さんみたいよ」

「お母さんは酷いな」


笑いながら、また時間を気にして帰っていく。
私は給湯室の冷蔵庫の一角を借りそれを保存し、夜はそれを食べるために、残業しないように勢い良く仕事を片付ける。

不思議だ。
彼が一緒に食べてくれるわけでもないのに、私の食生活がどんどん良くなっていく。


時間を気にしていたら会えないんだから、深夜でもいいから来なさいよって言ったのはつい先日のことだ。


そして本日、金曜日。

【遅くなるけど行く】との彼の返事に、私はを日中浮かれるのを止められなかった。

キスするのは早かったくせに、一線を超えるにはそこそこ付き合わないとと思っているのか、光流は手を出してこない。
何処の修行僧だよ。別にこちとら初めてでもないんだから、そこまで気を使ってもらわなくてもいいのよ。

今日はそれを打破するためのお誘いでもある。

深夜に気合入れた格好して待っているのもなんなので、そこそこ可愛く見える部屋着を用意した。
後はたっぷり美容液を染み込ませた肌。
これで勝負するしか無いっしょ。

ああもう、またガツガツしてるわ、私。
これが今まで縁遠かった理由だと分かっているけど、やっぱり自分をそう簡単には変えられない。


< 159 / 177 >

この作品をシェア

pagetop