“毒”から始まる恋もある
「今お通しお持ちしますね。少々お待ちください」
その彼が下がると直ぐ、別の店員がお手拭きと水を持ってくる。
メニューを開いて、今日のオススメの説明をしている内に別の店員がお通しを持ってくる。
「ご注文お決まりになりましたらお呼びください」
一連の流れがスマートで、よどみない。
凄いな。他にも客がいないっていうならわかるけど、店内はそろそろ三分の二は埋まろうとしている。
全員にこれだけのサービスできるんだとしたら、接客担当が一体何人いるんだこの店。
「なんか、雰囲気はいいお店ですね。お料理はどうだろ。刈谷先輩、何食べます?」
「そうねぇ。美容にいいものがいいわ」
「コラーゲン鍋とかどうでしょう。宴会用のプランってあるのかな……」
ブツブツ言いながら、菫の視線はメニューを行ったり来たりする。
「宴会の時はビールとメインの鍋、サイドメニューをいくつか頼めばいいと思うわ。とりあえず、悩むのは食べながらにしましょうよ。私お腹すいたわ」
「あ、そうですね。じゃあどうしようかな」
「これでいいんじゃないの。店員呼ぶわよ」
菫の決断を待ってたんじゃ時間がかかりすぎる。
私がチラリと視線を向けると、店内を歩いていた数家さんが気づいた。
にっこりと笑い、伝票を取り出す。
「お決まりですか?」
「ええ。コラーゲン鍋と揚げ出し豆腐、枝豆、後はビール。……菫は?」
「あ、じゃあ酎ハイで……えっと、レモンのやつでお願いします」
「かしこまりました」