“毒”から始まる恋もある
＊

　それから数日後、届いたのは、モニター契約書と初夏向け新メニュー試食会のお知らせ。
ひと通り読んで、一応きちんとした規定があることに驚いた。

契約期間は一年間で継続更新は随時。
一応料理が報酬ということになるらしく、金銭の支払いはないけれど、特典としては常に１０％引きになるチケットが貰えるらしい。
試食して意見交換、加えてアンケート用紙の記入が主な仕事らしい。

【契約書にサインしてお持ちください】と隅に書かれた文字は、丁寧な印象だ。
コレが数家さんの字かしら。

一方、試食会は定休日である火曜の夜に行われるらしい。

まあ一食浮くと思えば悪くはない。
それに、モニターも数人いるようなこと言っていたし、新しい出会いもあるかも知れないし。

会社でそれをひらひらさせていたら、菫が目を丸くして覗きこんできた。


「モニター試食とかあるんですね。初めて知りました」

「私もこんなこと頼まれるの初めてだけどね。店員の口ぶりでは前からやってたみたいよ？」

「でも美味しかったし、いいじゃないですか」


菫はすっかりあの店がお気に入りになったようだ。私も確かに美容には良さそうだなと思う。ただ、暑い時期になったらなんか嫌だけど。


「で、行くんですか？　出欠をご連絡くださいって書いてありますけど」

「あらホント？　読み飛ばしてたわ。今週中に連絡しろって？」


連絡先は店の番号だ。
あんまり忙しい時間にかけてもなんだろうと、十六時ごろ、休憩がてら外に出てコールする。

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