“毒”から始まる恋もある


「あ、ちょっと待って。かける前と味比べがしたいわ」


思わず口を挟んでしまった。
だって、チーズかけたらだいぶ味が変わっちゃうんじゃない?


「そうですね。紫藤さまと北浜さまは?」

「じゃあそうしよう」


数家さんと、もう一人の女性店員が手分けして取り分けていく。
お皿にのると、玉ねぎのまんまる具合が改めてよく分かる。


「いただきます」


お水で口内をスッキリさせてから箸を入れる。
予想以上に柔らかく煮こまれた玉ねぎは箸の侵入を拒まない。


「わ、あまーい」


私が口に入れる前に、紫藤さんが言った。
一拍遅れて口に入れると確かに玉ねぎの甘味が口に広がる。

スープも白ワインが入っている割には香りだけで、味はコンソメが強い。


「チーズを入れるとだいぶ印象変わるんですよ」


言われて、ネギとチーズをふりかけてみた。

一口飲んで納得。
チーズで塩気とコクが出た。
さっきのも美味しいけれど、チーズが入ることで印象に残る味になる。


「いいね。旨い。酒が進みそうだ」

「今日はお出しできなくて申し訳ないです」

「でもメニュー的には副菜の印象が強いかなぁ」


付け足すように紫藤さんが言う。
確かに、メイン食材が玉ねぎって言われたらなぁ。

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