“毒”から始まる恋もある

ちょっと前のイジイジしていた菫なら大嫌いだし、仕事押し付けるのに都合のいい後輩くらいにしか思ってなかったけど、里中くんによって変えられた菫はそんなに嫌いじゃない。

今では私に正面切って向かってこれるし、自分磨きもちゃんとしている。
努力する女は嫌いじゃないの。だから、簡単に言えば前よりはちょっと格が上がったのよ。


「別にー。自分の後輩でもあるのよ。褒めるときだってあるわ。それにね、落ち込んでいたとしてもアンタはいらない」

「ひでー、前は喜んでたじゃん」


喜んでたわけじゃないから。

言い返す気力も失せて、谷崎を睨みつける。


里中くんに振られてしばらく、私は荒れていた。

一目惚れから始まって、長年思い続け、周りにビビられるほどの勢いで頑張っていた恋が破綻して、自暴自棄になるのは別に普通のことだと思う。

とにかく新しい恋がしたくて、毎週のように合コンをセッティングした。

これでもスタイルは悪くないし、顔だってそんなに悪くない。
元が一流の顔だとは思っていないけど、化粧で化けれるくらいの造形はあるはずだ。

新たな恋をするための努力はみんなした。

新しく出会う誰もが、そんな私の見た目に釣られて、最初は調子良く寄ってくる。

でも一度お持ち帰りしたらサヨナラとか。
しつこく電話したら引かれたりとか。
どいつもこいつもその時だけ良ければそれでいいって輩ばっかり。

そんな愚痴をかたりながら同期に管巻いて、起きたらこいつの隣だった時にはさすがに反省した。

さすがに同期にこんな軽く扱われてちゃ最後でしょ。

身持ちの軽い女だなんて思われるようじゃ駄目。

恋をするなら真剣にしなきゃ。
体だけ満たされたって、心が虚しさを覚えてしまったらもう無理。


< 5 / 177 >

この作品をシェア

pagetop