学園世界のイロジカル
「零、人の家族なんてそんなプライベートなことは簡単に聞くなよ?」




……後ろを振り向くと、そこには柊の姿が。



「あれ、柊…最近会ってなかったね、久しぶり!」



「おう…いろいろこっちも忙しいんだよ」



「まあ見た感じ柊も寝不足っぽいですね」



「正解。もう俺テスト中に寝そう」




ああ、それは私も思ってた。


問題を解き終わった後に見直しするのも忘れて寝ちゃいそう…



それだけは避けなきゃ。




「にしてもポイセのメッセージでも五傑席の3人の文面から多忙さが伺えたよねー」


「ああ、確かに」




なんていうか、淡白な感じだった、みんな。


いつもならもっとテンション高めなのになー、とか思ってたんだよね。



それにここ1週間近く会ってなかったし。




「学生決闘のあの事件の調査を上に気付かれないようにやるのは大変なんだよな…

龍矢ががんばってくれてるけど、引き出せる情報にも限度がある」



「まあ、王家ですしね」



「そうなんだよなー」




いつの間にかそれぞれの教室の近くについてて、そこで別れる。



教室は座席がほぼ自由。



相変わらずの講義場みたいな教室に、私と零並んで座る。




「……椿。

先ほどはすいません、家族のことを簡単に聞いてしまい」




急に零が静かな声でそんなこと言ってくるんだから、そりゃあびっくり。


今日の零、髪の毛整ってないからTHE・不良モードだし…



違和感しかない、けど……




「いや、全然大丈夫!気にしないでよ、私も気にしてないし!」



「……すいません」





人には人に話したくないことが1つや2つある、だなんて。



そんなありきたりな言葉にうなずいてしまうのは、やはりそれがみんなに共通することだからなのかな。




私にだって話したくないことは1つや2つどころじゃなくたくさんある。

いや、普通そんなもんじゃないかなー、と思う。




だからこそそこを人に突かれたら、怒るんじゃなく困っちゃう。



怒る理由なんてない。




ただ、言わないのは。





私の場合、悲しくなってしまうだけ。






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