純情女子と不良DK
「108円になります」
「あ、袋はいらないです」
「ありがとうございます」
さっそくペットボトルの水を買い、コンビニを出ようとした。
歩いて帰るんだったら、洋平に送ってもらえば良かった。話し相手いた方がいいだろうし。
なんて、今更だが。まぁ静かな夜の道を歩くのは好きだし実際家の傍の川沿いを夜に散歩することだったある。
歩いて酔いを醒ましたいし。
一応、親に連絡を入れてコンビニから出ようとしたところで丁度数人の学生と思われる男子集団が入って来たので、立ち止まった。
「まーじで!?それ!」
「まじまじ、超ウケるよな」
「え、そんでどーなったん?」
「あっはははは!」
ああ、若いオーラだ。とても今時オーラ。自分も若いけど。なんというかコイツらは今時若者オーラだな。と思いながら邪魔にならないように端へ寄った。
はやく行け外出れないだろ、と心の中で悪態をつきながら何となく若者集団の方へ顔を向けると。
そのうちの一人と目が合い、思わず固まってしまった。
「あっ」
「!!」
向こうは驚いたように声をあげて、葉月を指差した。
それにビクッと肩を揺らす。
そう、その集団の中にいたのはポン太の散歩の時に会った成瀬優聖だった。まさかまた会うなんて思わなかった。
どうしよう、声をかけるべきなのだろうか。いやでもまだ一回しか喋ったことないし。
しばらく固まっていると、それに気が付いた優聖の友人が不思議そうにした。
「なに、優聖知り合い?」
「うん、知り合い」
「えー、優聖の彼女!?」
「いや違うけど」
「彼女!?どこどこ!」
「あれあれ!」
一斉に全員の視線が葉月へ集まり、葉月は一気に顔が赤くなり肩を跳ね上げた。
怖そうなチャラそうな不良そうな、そんな人達にこんな見られて平気でいられるわけがない。
葉月は引き攣りながらも何とか笑顔を浮かべ、軽く会釈した後逃げるように速足でコンビニを出た。
「あっ、逃げちゃった」
「お前の目つきがわりーからだよ」
「はぁ?お前人のこと言えなくね?」
「でも俺結構タイプかも~」
「あーお前好きそうああいう初そうな子!」
そそくさとコンビニを出て行った葉月についてあれやこれやと言い始める友人達とは反して、優聖は黙ったままだった。
何も喋らない優聖に、怒らせたかと思ったのか周りが「優聖?」と心配そうに彼を見た。
「わり、俺ちょっと用事思い出した」
「え、あ!おい優聖!?」
「ほんとごめん」
そう言うと、優聖は走ってコンビニを後にした。
そんな優聖に周りはポカーンと口を開けていた。
「ありゃあの女の子追っかけてったな」
「…え!まじ!?じゃあやっぱ彼女?」
「そんな感じはしなかったけどな」
「うわぁ超気になる。後つけてみる?」
「やめろ、バレたら殺されるぞお前」
あの女の子、葉月の正体が気になるのであった。