純情女子と不良DK
あたふたしていると、葉月は思い出したようにハッとした。
「でも、ほら!えっと、な、成瀬君さっきまで友達といたし戻った方が」
「俺も帰ろうと思ってたんで別に気にしなくていいですよ。じゃ、帰りましょ」
「……」
もう反論する余地も暇もない。
優聖はそのまま葉月の前を歩き始めた。
葉月はムム、と口を引き結び躊躇ったがやがて諦めたように優聖の後を追って横に並んだ。
こんな風に、洋平以外の異性と並んで帰るのは初めてかもしれない。
なんだか少し緊張した。でも相手はおそらく高校生だし、弟と思えば問題はないか。
「あの、なんかすいません。ありがとう」
「いーえ」
お礼を言えば、優聖は小さく笑って葉月を見た。
途端、葉月は驚いて目を見開いた後にバッと顔をそらした。そんな彼女の行動に優聖は「?」を浮かべながら、特に気にしていない様子だった。
しかし葉月にとっては慣れないこと。
(イケメンに微笑まれた…!眩しい!)
やはり慣れない。イケメンって恐ろしい。
なるべく直視しないようにしよう。
「つか、日高さんってどこの高校ですか?」
「…ん?」
優聖のその質問に葉月は思わず眉を寄せて優聖を見上げた。
どこの?それはつまり、どこの高校出身かということだろうか。
いやそりゃそうか、どう見たって現役高校生には見えないしそういうことに決まってるか。
「南海扇(みなみおうぎ)高校だよ。えーと、ほらよく散歩する川沿いを真っ直ぐ行ったところの…」
「あっ、俺と一緒!俺も南扇(なんおう)です。へぇーすげぇ偶然」
「そうなんだぁ。なんか親近感わくね」
まさか同じだったとは思わなかった。まぁでも自分はとっくに卒業してる身だけど。
しかし、優聖の次に言葉に葉月は固まることとなる。
「何年ですか?」
「…んん?」
「ちなみに俺、一年です。もしかして同じ学年?」
「…えっ、ん?ちょ、待って?」
「違いました?じゃあ二年生か」
「私、もう卒業してるよ!!」
今度は優聖が固まった。目を見開いてかなり驚いている様子だった。
葉月も驚き、というか若干ショックを受けていた。
だって、高校生に見られたうえに同じ学年だと思われたのだ。
「えええ!?そ、卒業してんですか?え、嘘だろ…。俺てっきり同じくらいかなと」
「どこがっ?どう見たって二十歳の成人女性じゃん!」
「…え?」
「な、なんですか」
成人女性と言った瞬間、じっとこっちを見つめて来た優聖にたじろいだ。
その目は明らかに信じられねぇ、とでも言うような目だった。
「全然見えねぇ」
「失礼なっ。今日だって居酒屋で飲んでたんだから。お酒飲める歳だから!」
それにしても想定外だ。自分では見た目普通に成人女性だって思ってたのに、自分では大人っぽくなったのだと思っていたのに。
見事に論破されてしまった。端から見たら幼く見えるのだろうか。
ショックのあまり葉月は両手で顔を覆った。
「え、なにも泣かなくても」
「いえ泣いてません別に」
ムッ、として顔から両手を離した。