純情女子と不良DK
高校一年生、ということは四つも離れてるということだ。
それなのにこの少年の態度ときたら。
私を同い年だと間違えるなんて、あんまりじゃないか。と葉月はブツブツ文句を零していた。
まぁ優聖にもバッチリ聞こえているわけだが。
優聖は、まさか葉月が四つも年上だとは思わなかったが、自分の想像していた通りの女の子で小さく笑ってしまった。
よく学校帰りに見かけた、犬と駆けまわる葉月の姿。
元気で明るくて、アホっぽい。そんな子だった。
「…何笑ってんの?」
「あ、笑ってました?すいません」
もう笑いません、と言って口もとを隠す優聖。
髪でも染めようかなんて葉月は思った。黒髪から茶髪にカラーチェンジすれば、年相応に見られるだろうか。
いやでもそんな童顔だとは自覚してなかったし。今度洋平や花に聞いてみようか。
あれこれ考えた。
「そーいえば、お酒飲んだってわりにあんま酔ってないんですね」
「あー…。うん、まぁさっきちょっとふわふわしてたけど今もう大丈夫かも。私結構強いんだ!それに今日そんなに飲んでないし」
「へぇ。いいっすね。二十歳になれば堂々と酒飲めるの羨ましいです」
「…ん?」
なんだか今の言い方にどこか引っかかり、小首を傾げた。
葉月は眉を寄せて優聖を睨むように見上げる。
そんな葉月の鋭い視線に、「え、なんか睨まれてる」と怯んだように言う。
「二十歳になれば堂々とって、まさか成瀬君その歳で飲酒とかしてるの…?」
「え?あー」
「ダ、ダメだよ?お酒はちゃんと、二十歳になってからで!」
そりゃ、この世の中いろんな人がいる。
未成年の飲酒、喫煙なんてあちらこちらにいるだろう。
人の勝手なイメージをつくりあげるのは良くないことだけど、優聖といた友人達もお世辞にもしっかりした高校生には見えなかった。
つい、出来心でそういうものに興味がわいて手を出してしまうことだってあるだろう。
「それにお酒とかそういうのは、成人して初めて口にすることで…えーと、ありがたみ?というか喜びを感じられるわけで」
「うんうん、それで?」
「それで?…それで…、もし学校とか他の生徒とかに知られちゃったら大変なことになるし」
「うんうん、後は?」
「後?後は…」
一応、忠告というか注意をしてるというのに何だかこの男、少し楽しそうなんだが。
葉月は「なんだこれは」と眉を寄せて目を細めたが、いいからはやくと優聖が続きを促した。
「えっと、後…は、そう!高校生がこんな遅くに駅前をうろついてたら危ないよ!」
そう言うと優聖は一瞬目を丸くした。
「最近物騒だから、変な人に絡まれたり警察に注意とかされたりしたら大変だよ」
「それ日高さんが言う?」
「……」
確かに。
優聖の言葉に、何も言えなくなった。
しかし、後になって自分の言った言葉に後悔した。