純情女子と不良DK
こんな年上に…しかも会ったばかりの奴に口うるさく説教されるって、よくよく考えたら相当ウザいじゃないか。
葉月はハッとして慌てだした。
「って、あー!こんな事言われてもウザいね!私関係ないし…」
ああ、もう何言ってるんだろう。お母さんかよ私。
また顔を両手で覆って、反省をする。
「や、別にウザいとか思ってないですよ。ちょっと面白かったぐらい」
「…面白い?」
「うん、面白い」
思わず、眉を寄せて「はあ?」と言うような顔してしまった。
特に面白いことを言った覚えはないのだが。
さっきまでの自分の言動を思い返してみても、うん、別に何も面白いことは言ってない。
んんん?と考え込むように腕を組んでいれば、優聖がブッと吹き出した後、声をあげて笑い始めた。
お腹をおさえて笑いだす優聖に葉月は目を丸くした。
「えっ、怖い!何で急に笑うの?」
「いやだって、何か変な人だなって…ぶっ」
「……」
何がそんな面白いのか。変な人って、私はいたって普通の人間なんだが。
最近の高校生の笑いのツボがよく分からない。
「はぁー超笑った」
「そ、それは良かったですね」
何だかよく分からないけど、まぁいいかと思ってしまった。
それから、犬のしつけ方がどうだの、おすすめのペット用品のショップがどうだの、色々話しながら家までの道を歩いた。
見た目は少し怖いけど、悪い子じゃない。むしろ優しい子だと思った。
家が近くなってきたところで、もうここで大丈夫だと伝えて優聖とはドッグランドの見える橋の上で別れた。
***
「ただいま~」
「おかえりなさい。帰り道大丈夫だった?」
「うん、なんとも」
家に帰り、母が出迎えてくれた。
どこか心配性な母には、しっかり連絡は入れておいたけれど、やっぱりこの時間の夜道は心配になるだろう。
一人で帰ると伝えたから、尚更。なんとなく、優聖のことは言わないことにした。
「お父さんもただいま」
「おう、おかえり」
リビングへ向かって父にも声をかけた。
「また花ちゃんと洋平君と飲んできたのか?」
「うんん、今日は洋平と」
「ほんと仲いいなぁ。付き合ってはいないのか」
「えっ、はぁ!?」
思わず大きな声を出してしまった。
洋平君なら、お父さんもよく知っているし心配はいらないな、なんて言い始める父に葉月は違う違うと勢いよく首を横に振った。
「なんだ、違うのか?」
「えー、お母さんも洋平君なら大歓迎なんだけどなぁ。……付き合わないの?」
「付き合いませんっ!!」
変な事言わないでよね、と頬を膨らませながら冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルえお取り出してコップに注ぎ一気に飲み干した。
「照れなくてもいいのに」
「照れてないよ!洋平はそんなじゃないから」
「えー」
「えー、じゃない」
確かに洋平はいい奴だ。
高校でなんだかんだ仲良くなって、色々相談とかにも乗ってもらっていた。
ただ、恋愛うんぬんに関してそれはまた別の話。
友達としては好きだ。けど恋愛としてのそれじゃない。断じて。
残念そうな両親に何だか微妙な気分だ。