純情女子と不良DK
『お前今日夜暇?』
散歩から帰ってきたちょうどその時、突然洋平から電話が来て暇なら飯でも行こうとお誘いが来た。
まぁこうしていきなり誘いの電話が来ることは珍しいことでは無いし、今更驚かないのだが。
迷うことなくオッケーの返事をした。
「おっす」
「よっす」
夜、待ち合わせの居酒屋の前で待っていると洋平が来た。
お互い変な敬礼をして挨拶を交わす。
「大学は?」
「今日二限で終わり」
「そうなんだ」
「おう。あ、すいません二人です」
店員に席まで案内され、向かい合うように座った。
さっそくお酒を頼んで乾杯をした。
「ほー!やっぱビールだよな~」
「いやいや、カシオレでしょ~」
「葉月ちゃんったらお子ちゃま~」
「それにしてもサークルとか入ってんの?」
「おいスルーすんな!」
華麗にスルーし話を再び大学の方へ戻す葉月に洋平は口を尖らせた。
洋平のボケはのっかってしまうといつまでも続くから面倒だ。ノリ気しない日はスルーに限る。
「サークル入ってるよ」
「入ってたんだ?やっぱアレ?高校と同じでバスケとか?」
「いや、天体研究部」
「え?」
思わず、ポロッと持っていた箸を落としていまった。
洋平は高校三年間ずっとバスケをしていたから、てっきり大学のサークルでも続けていたのと思っていた。
それが、まさかの天体研究部ときた。…意外すぎる。この男、今までそんな趣味を見せる素振りがあったか…?
葉月は目を細めて洋平を見た。
「いやぁ~、お前知ってるか?宇宙ってのは膨大で今も大きくなり続けてんだぜ?」
「それ誰でも知ってるから。…ていうか洋平、天体好きだっけ…?」
「それがよぉ、大学入って興味持ったっていうか。ほんとはバスケ入ろうと思ってたんだけどさ、いや…天体研究部、悪くねぇぞ…ってなって」
「意外すぎる…」
どう見たって天体好きじゃないだろ、と突っ込みたくなった。
それから一人で、宇宙がどうのとか星座がどうのとか語り始めて、「あ、これめんどくさいやつだ」と察知してスマホを弄った。
「それでその星座にはギリシャ神話が、…って、聞け!」
「え?なに?ごめん聞いてなかった」
「最初から聞く気ゼロじゃねーか」
私は長々と天体について聞きにきたわけじゃないんだけど…。
と心の中で溜息をはく。
「つーかお前は?どうなの?どっか仕事するとこ見つかった?」
「だから今は休養中ですぅ」
「はいはい、ニート中ね」
うぐっ…、と何も返せなくなり言葉を飲み込んだ。
確かに今の自分はニート以外のなにものでもない。否定はできない。