願う場所、望む奇跡
「それは、そうとうな覚悟だね。出来れば、あまり聞きたくなかったなぁ……」
また寂しそうに、遠い目をしている。
それもそうだろうな。
もし俺がこの人の立場でも聞きたくはない。
だけど、言わせたのはこの人だ。
理由が分からないけど。
「俺さ、夏希とは同期で飲みにも行って、何でも話せる仲だったんだ。仕事も出来て明るくて、面倒見もよくて、好きになるのに時間はかからなかった。
その中で、弟のことだけは話してくれなかった」
「え?弟って、俺のことですよね?」
「もちろん。
俺が知ったのは、女の子たちの噂で。そのあと、夏希に詳しいことを聞いた。
ショックだったよ。何でも話せると思っていたのに、家族のことを話してくれないのは」
これを聞いていて思ったけど、この人は本当に夏希のことが好きなんだ。
痛いぐらい、それが分かる。
夏希もこの人が好きなんだよな。
だったら、俺の出る幕はないんじゃないか。
血の繋がった弟より、この人の方が幸せにしてくれるから。
「俺も、君の偽りの彼女と一緒だよ」
「え?」