願う場所、望む奇跡
「そういうこと。
連絡も慎重にしたわ。電話は使えないから、友達や病院内の知り合いに頼んで手紙を渡したりしていたの」
20年ぐらい前なら、まだ携帯は普及していない。
普及していたところで、携帯は取り上げられていただろう。
もちろん、家の固定電話なんて使えないから手紙しかないという訳か。
「母さんが逃げたあと、実家は探さなかったの?」
「もちろん探していたわ。あらゆる手を使って。
直哉と逢っているだろうと確信を持って、直哉の居場所を探していた。
でも、それまでほっといたものだから見つけられなかった。子供もいたから、そんなに遠くへは行かないだろうと思っていたみたい」
「結局、見つからずにすんだの?」
「……見つかったわ。それも、別れた理由ね」
「え?じゃあ、私たちをバラバラにしたのって実家なの?」
「それも理由の一つよ。
子供を2人一緒に逃げるのは辛いから。だから、成人したらまた暮らそうって約束したの。
永遠に叶わなくなってしまったけど……」
お母さんは、今にも泣きそうな顔をした。
結局、いつまでも実家が邪魔したんだ。
お母さんたちはただ、一緒にいたかっただけのはずなのに。