願う場所、望む奇跡
「彼女のことは、他言無用だよ。言ったら、次こそ義哉がキレるよ?」
冷めた目で、うっすら口角が上がる。
これを聞いた彼女は、肩を震わせた。
そして、逃げるように走り去った。
一体、なんだったんだ。
疲れたじゃないか。
「姉さん、大丈夫?」
彼女がいなくなって、ようやく義哉が口を開いた。
この人、器用だな。
“姉さん”と“夏希”を使い分けるなんて。
そんなどうでもいいことを考えていたけど、片方の肩が徐々に熱を持ち始める。
もう大丈夫なのに、未だ肩を抱かれているせいだ。
「だ、大丈夫だから、離して」
遠慮がちにそう言うけど、離してくれる気配はない。
これでは、熱が上がる一方だ。
「こっちは、気が気じゃなかったよ。叩かれそうなのに、黙ったまま見ているし」
「あれは、1度叩けば気が済むのかなって。反抗するのがめんどくさくなって」
そう言ったら、呆れたように愾を吐かれた。