螺旋上の赤
「あん?」

「ほら!あそこにアレックスが引っかかってる!」

「おぉ本当だ。あの馬ヅラ、懐かしいな。」

「熊!馬じゃなくて熊だよ!
 ——って、ほら早くしないと流される!さぁ行くのだ!」

風にそよぐ葦の葉に、ギリギリだけどアレックスの手が引っかかっていた。
でも、ユラユラして今にも流れてしまいそう。
急かさなきゃ。

「ワシはアレックスじゃ〜。このままでは流されてしまう〜。
 助けでぐれ〜、助けでぐれ〜。」

ちょっとしゃがれた声で、アレックスの気持ちを代弁する。

「何やってんだよ……ったく。」

心底呆れました、って感じの表情を浮かべながら、有はバシャバシャと川の中へ入っていく。

「おわ、危ねぇ。この辺、底がぬかるんでやがる。」

ズブズブ……

バシャバシャ……
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