螺旋上の赤
「助けでぐれ〜、助けでぐれ〜。はやぐしてくれ〜。
 ——ほら、アレックスも早くしろって言ってるじゃん!がんばれ!
 素早く動くのだ!」

「無茶言うなぁ。
 この辺の川底、結構ぬかるんでるから中々進めないんだよ。
 それと念の為言っておくが、あの落し物は俺のじゃなくてお前のだからな……。」

有がこっちを恨めしそうに見つめながら、アレックスを指差し苛立っている。

私はごめんねと舌を出して反省する仕草を見せる。

「はぁ……仕方ねぇ。
 ——た方が負けってヤツだな。」

有は呆れた様に何事か呟き、再度アレックスの救出に向かう。


——よし、無事に回収できたみたい。

有が手に人形を持って、手を振ってる。

「すまないねぇ、すまないねぇ。」

私はしゃがれた声で感謝した。

心なしか有の手の振りが遅くなった気がした。
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