螺旋上の赤
「ほらこれ。
 ——はぁ〜、さむっ!流石にキツかったな。」

有が河原まで戻ってきた。

「ありがとね……本当にさ。」

ジーンズの半分くらいまでびしょ濡れになっていたし、
靴なんて泥濘にハマったらしく泥だらけだった。

「まぁ、いいってことよ。
 忘れられていたとはいえ、恩があるからな。」

前髪を掻き上げながら歩いていく。
数歩先へ進んだところで振り返り、

「さ、帰るか。
 こんなとこにいつまでもビショビショで居たら、風邪ひいちまう。」


「——ねえ、ちょっと家に寄ってかない?
 ここからそんな遠くないからさ。」

不本意だけど、このまま返すわけにはいかないし。

「——は?……はぁ!?」

有は驚いた顔をして、オドオドしている様子だったが、
暫くしてから小さく頷いた。
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