螺旋上の赤
気がつけばそれなりに時間が経っていることに気付く。
ニット帽も被ったし、とりあえずは何も無いだろうと高を括って自転車を軽快に走らせた。

その結果がコレだよ。
秘密道具のニット帽は悪役に取り上げられ、か弱い私は地面にへたり込んでいる。
悪役は何故か私を優しく立ち上がらせ、ズボンやら、服やらの汚れをはたいてくれている。

「凛……怪我はしてないか?無茶はするなよ。」

私は小さく頷いた。

「何かあったら大変だからな。
 あのさ……あの時からずっと言いたかった事がある。
 今ここで言わせて欲しい。」

私は更に小さく頷いた。

「あの時はありがとうございましたっ!」

有が深々とお辞儀をした…

「いえ……大丈夫……です。」

地面に向かって呟いた。
< 64 / 66 >

この作品をシェア

pagetop