はじめての男
 ぎゅっと、苦しいほど抱きしめられる。
 足がふいに力を失くして、そのまま重なる様にベッドに転がった。亮介の匂いが私を包む。

 落ち着かない視線が、天井に貼られたアイドルポスターに止まる。
 乳のはみ出しそうな水着のアイドルが、うっすら口を開けて見下ろしている。今まで亮介が眺めていたオンナだと思うと、何だかムカッとして睨みつけた。
 
 荒い息遣いの後に、ごくりと喉を鳴らす音。ひどくぎこちなく耳から首筋へ湿った唇と舌が這うと、ゾクゾクと鳥肌が立った。堪らずきゅっと首をすくめる。震える指先が私の長い髪を後ろへ梳く。
 何だかとても切ないような、それでいて鬱陶しいような妙な感覚だった。
 
 突然、苺柄のブラの上から、大きな手が胸を鷲掴みにした。
「やだ、イタイ!」
 目を向けると、腰にまたがった亮介がぎらつく目を見開いた。
「ご、ごめん。で、でもキモチいいんだろ?」
 どう答えていいかわからなくて息を飲むと、亮介は自分で納得したのか、背中に手を差し込んできた。眉を寄せて必死にブラのホックを外そうとしている。
 しかしその手ごわさに「くそっ」と呟くと、肩ひもをずり下げ胸を露わにして、大きいとは言えない乳房をしばらくまじまじと見た。
 私は恥ずかしさが込み上がって来て、両手を胸で交差させ体を捩ったが、その手を掴まれ枕の上に押し付けられた。
「じっとして」
 睨みつけるように言うと、震える手を伸ばし、わしわしとむき出しの胸を揉み始めた。
 彼の顔を見ていると、心臓が飛び出しそうに打ち出した。何だか、うずうずした感覚に包まれ、思わず胸をつき出す。

「感じる?」
 おずおずと訊ねる、緊張した彼の顔は可愛かった。
「な、なんとなく……」
 私がそう答えるや否や、乳首に吸いついて来る。ぞくりと体に震えが走った。今度は股間に震える指先を感じた。パンティの上から恐る恐る触れている。

「あっ」
 
 体が強張った。でも、いよいよだとごくりと唾を飲んだ。その部分に私のヴァギナがあって、亮介に触られると天にも昇るキモチになるはずだ。初めてでも感じると親友のサキは言っていた。恥ずかしくて暴れたくなったけど、我慢して彼の手の動きだけを追った。

 ずり下ろされたパンテイが丸まって、ベッドの下へ投げられた。彼を見ると唇を舐めながら、その場所を見ている。まるで蛙の解剖でもしているかのように、眉根を寄せじっと観察しているのだ。
 恥ずかしくて死にそうだった。驚いて腿を閉じると、膝を掴み無理やり開かせて直に触れはじめた。
 何が気持ちいいのかわからないし、抱きしめてキスされた時の興奮が急激に冷めていく気がした。

 なんで亮介にセックスして、だなんて頼んだのか……。彼は私のことなんか、好きだと思ってない。単に生殖と言う本能に突き動かされているだけだ。
 後悔して体を起こしかけると、彼の指が唐突に私の中へ入ってきた。
「ぬ、ぬるぬるしてる」
 うわごとのようにそうつぶやくと、指がぐいぐいと突き入れられる。妙な熱がおなかのあたりに広がる。「あっ……」と、思わず声が出る。
 ああ、これが感じるってことなのかもしれないと、目を閉じた。何度か指を出し入れした亮介の息がますます荒くなる。

「アユ……」
 震える声で名前を叫んで、亮介が股間をもっと押し広げた。Gパンのジッパーを引き下げる音に、彼の下腹部を見た。
 蹴るようにすべて脱ぎ去ったそこには、あらぬものが有り得ない形でおったっている。
 思わず腰が引けた。でも亮介は腿にしっかり腕を掛け、覆いかぶさるように体重を掛けた。
 次の瞬間、体に傷を負う痛みが走った。いきなり彼の怒張したペニスが突き入ったのだ。
「痛い!」
「大丈夫だから、我慢して! すぐにキモチよくなるから」
 亮介はようやく私の顔を見て、強張った顔でそう言った。
 そして歯を食いしばると、腰をつき出してきた。

「ああ、いやだ。痛い……やめて。痛い」
 逃れようともがく私を押さえつけ、深く貫く。涙が出た。避けるような痛み。無理やり傷つけられる恐怖。冷たくなってゆく体……。それでも彼は動きを止めなかった。痛いとは聞いていたけど、こんなひどい痛みだと思わなかった。
 亮介が有無を言わさず出し入れするたびに、涙が流れた。
 
 しばらく腰を振ってから、
「ううっ……」
 と、かれは呻いて体を反らせた。
 ぴくぴくっと私の中で彼のモノが痙攣した。動きがとまって、大きく肩で息をしている。
 そして汗に光った体が私の上に落ちてきた。
 ジンジンと鈍い痛みの残る膣から、彼はぬるっとペニスを抜いた。股間に不快な熱がどろどろと溢れてくる。
 その瞬間、亮介が我に返ったように腕を立てて体を起こした。彼の顔色がみるみる蒼褪めてくる。

「や、やば! 中に出しちまった!」
 彼は唐突に叫ぶと、ショック状態の私の肩を掴んでゆすぶった。
「お前、まさか、妊娠しないよな?」
 私を責めるように、声は尖っている。私は唖然とした。
「ああ、もし妊娠したらどうしよう。叔母さんに八つ裂きにされる……」
 頭を抱えた彼を見て、私は現実に引き戻された。
 亮介はマジで後悔しているのだ。私を抱きしめることも優しい言葉もなしで、親の顔を思い浮かべるなんて、信じられない!
 
 愛のないセックス――雑誌を頻繁に飾る言葉が浮かんだ。途端にとんでもなくみじめな気分になった。
「大丈夫だと思う。もうすぐ生理だし」
 そうつぶやくと、私はベッドから飛び降りた。
 
 やっと私の存在に気付いたかのように亮介は振り向いたが、怯えるような目で見つめるばかりだった。とにかく彼の傍から離れたかった。
 汚れたままの股間にパンティを引き上げ、TシャツとGパンを身に着ける。
そしてドアのノブを掴むと、彼を肩越しに振り返った。

「バイバイ、このサイテー男! あんたの顔なんか二度と見たくない!」
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