エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
リョウタと日香里ちゃんは、私たち同様、芸能人とそうじゃない人のカップルだ。
でも二人には、私たちにはない決定的な違いがある。

それは、二人は愛し合って結婚したこと。
だから二人は知り合って4ヶ月ちょっとしか経ってなくても、迷いなく結婚まで踏み切ることができたんだと思う。

対して私たちは・・・。

善は自分の息子がいると分かったから、私に結婚しようと言ってきた。
責任を取るために。
もし、私に善との子どもがいなければ・・・。

善は私のことを「好きだ」と言うけど・・・そこに恋愛感情は・・・ないんじゃ、ない?
私たちって、日香里ちゃんたちみたいに、愛し合って・・・ない、じゃない。

気づいてしまった事実に愕然とした私の目から、とめどなく涙が流れ出てくる。

視界が涙でかすむ。
涙、拭かなきゃ・・・。

私は、夫婦になった誓いの口づけをしているリョウタと日香里ちゃんを、見るというよりただ視界に入ってるような感じで眺めながら、そっと乗せられていた善の大きな手から逃れるように、ハンカチを握りしめていた右手を、さりげなく自分の方へ移動させた。
そして、グシャグシャになったハンカチで、機械的に涙を拭う。

どうやら・・私の心の中は、私が思っている以上に、諦めと絶望でいっぱいになっているみたい。

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