一度でいいから好きだと言って
「いや、イケメンでも斯波さんだし」
「ヒデー女」
斯波さんがケラケラ笑う。
カランと斯波さんのグラスの氷が溶けて音をたてる。
「お前さ、結婚の予定とかあんの?」
「は?」
「ないんだったら仕事、紹介出来るけど」
一瞬、何かを期待した自分の浅ましさに苦笑してしまう。
「助かります。アラサーで無職は辛いなって思ってたんです。どんな仕事ですか?」
「ウチの親父の秘書。今の秘書さんがダンナの転勤で東京に行ってしまうんやて」
「わたしに務まりそうですか?」
「大丈夫やろ。ちはやは優秀な秘書やし」
「ありがとうございます」
仕事の心配がなくなって、少し心が軽くなったのが表情にも出ていたらしい。向かい側から頬をつままれた。