HALF MOON STORY
あの日、東京へと演奏に行ったハル
彼の生活は、その時から少しずつ
変化した
その日、お店に来ていた音楽関係者や
一緒に演奏した人達に、彼の演奏が認められたのだ。
そして、そのまま東京での仕事が
決まってしまった。
しかもCD作成の参加まで決まって、今では
月の殆どを東京で過ごしている。
ちょうどその頃、私の仕事も
年度末の仕事が立て込み始め
夜遅くまで残業する日が続いた。
二度目の決算と二度目の年度末
初めての時は上手く出来なかったこと
もう一度、今度は間違えずにやって
みたかった。
これは私の意地
彼が帰ってこないのをいいことに
仕事に夢中になっていた
こんなこと言うの悔しいから
ハル、あなたには一度も言ったことがないけれど
私、あなたがすごく羨ましかった
自分の夢を叶える為、努力して
それをちゃんと、自分のものにする力
自分も少しそれを感じてみたかった
あなたとちゃんと向き合う為に
あなたに何か、自分のしてることで
ちゃんと話せることが欲しかった
上手く言えないけれど
あなたの隣に同じ気持ちで
並んで立っていたい
あなたに自慢するためではなく
ただ何かに夢中になってるあなたと
同じ気持ちで話がしたい
あなたの気持ちに寄り添っていたい
そんな気持ちだった
そして多分、あなたはそんな
私の気持ち理解してくれるって
分かってたから
自分を良く見せる為とか、自慢とか
あなたはそんな風に考えたりせず
私のしたいこと分かってくれると
信じていたから
そんな私を、心から褒めてくれるって
知ってたから
あなたの褒め言葉は、私を幸せにするのだ
オニオンスープを喜んでくれた時みたいにね