HALF MOON STORY
彼の体温が
私の躰に溶け込んでゆく
二人の体温が溶け合って
一つになるのを
感じていた
ハルがギュッと
抱きしめてくれたから
ようやく私は
自分を取り戻した
そんな感じだった
懐かしいハルの香り
よくこの香りを
こうして感じずに
過ごしてこれたものだ
今はただ
この香りが懐かしく
愛おしい
「ハルの香りがする」
私はそう言葉にしてみた
ハルはくすりと笑う
「おい、何それ」
ハルは抱きしめる
腕をゆるめた
「だめ、もう少し
こうしていて、お願い」
一度素直になった
自分の心は
とてもわがままだった
私は再び
彼に抱き付いた腕に
力を込める
彼の口から
小さな笑いが落ちてきた
わがままな私を
受け入れてくれる笑い
「こんなに情熱的に
抱き付いてもらえて
俺すごく嬉しいんだけどさ
愛果
俺そんなことされたら
なにするかわかんないけど
いいの」
ハルが耳元で囁く
あなたの不在を埋めるのに
精一杯の私
その囁きの意味なんて
全く考えていなかった
「ごめん、限界」
そう言うと
ハルは私の腕を
無理やり離す
迷子になった
私の両腕
どうしてよいのか
判らなかった
すると
ハルがそのまま
左腕を膝に入れると
私を抱き上げた
足から靴がこぼれ落ちて
床に音をたてて落ちる
私は怖くなって
声をあげ
彼の首に両手でしがみつく
そして彼の瞳を
覗きこむ
彼の瞳に
喜びが浮かぶ
その喜びがまた
私を幸せにする
私は彼の額に額をよせた
「ハル大好き
逢いたかった」
彼が耳元で囁いた
「俺もだよ」
彼はそのまま
私をベットまで運んだ