紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
……すっごく、
振り向きたくないんだけど。
ギギギギッと、硬い動きで首だけ回すように後ろを見れば、
給水塔の上に立つ、見覚えのある姿。
『くろ、黒神 零弥……!なんでいる』
「ご主人様の呼び方がなってねえなァ、犬」
トッ、と軽やかに飛び降りた奴は、確かに自分と同じ制服着ていて。
だが髪の毛は黒い。
目は灰色だけど。
「あぁ、これか?スプレーだよ。瞳は自前だけどな」
俺の、異形を見るような視線に感づいたのか、軽く髪の毛を引っ張りながら奴は言った。
「俺より、お前のがビックリな化けっぷりだぜ?茜(アカネ)ちゃん」
『……うるせえな、ほっとけ』
「病弱で、儚げな窓際少女…ッとか…ハッ」
話しながら笑いをこらえ切れなくなったのか、むせた。
『うるせえなッ!!いろいろあんだよ!!てかなんで知ってんだよ!!お前』
「燐龍(ウチ)にゃ優秀な【情報屋】がいんだよ」
……個人情報だだ漏れ社会か!!
あれだろ、よくあるハッキングして戦ってる、あれだろ!
何をハッキングしてんのかよくわかんねぇけど!!