紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
それは、まるで燐光のように。
流れるような動きで、不良たちを倒してゆく。
あまりに唐突で、一切の無駄のない動きが、あまりに綺麗で。
状況を忘れてしばらく、
それに見惚れてしまった。
「よぉ」
全て倒しきった、それは、妖艶な笑みを浮かべて、いう。
「オオカミが喰われかけるたァ、牙でも研ぎ忘れたか?」
金色の髪を揺らしてクツクツと笑う。
『……追いかけっこに疲れたんだよ』
「そいつはご苦労なこった」
『まぁ…ともかく、助かった。ありがとう』
「礼はいらねぇよ」
『そうか』
さらりと言うその男に、
ホッと胸を撫でおろした。
「俺の犬だ」
『は?』
「今日からアンタは俺の犬だ。紅狼」
訂正。
なにをいっているんだこいつは。