スマイル 〜約束した君へ〜
約束した君へ
………ベッドに磔にされて、何日になるだろう…。

もう自分で体を起こすことも出来なくなった。


「ママ…」


小さな声で呼んだ。


「何…?ハルナ…」


スッピンのママが顔を上げる。


「今…何時…?」


辺りが暗く見える。
この所、目がかすむ事が増えて、昼も夜も分からなくなった。


「…夜中の3時よ。暗いでしょ…?」
「……うん…」


……私の目は…もう、殆ど見えてない…。
ママには…それが、分からないんだ…。


「お水飲む…?」


口を湿らせる程度。
それ以上はノドも通らなくなった。


「…いらない。寝る…」


瞼が重くなる。
これが病気のせいなのか、クスリのせいなのか、私には分からない。



こんな病状になってから、面会は禁止になった。
まりんちゃんやダイゴ君から入るメッセージは、ママが代わりに読んでくれる。
指がむくんでキーも打てないから、ママが代わりに打ってくれた。


一番話したい人からは、何も連絡がなかった。
あの夏空の下で交わした約束が、守れなくなりそうなのに、それを伝えることができなかった…。


(そうや君…ゴメンね…私…風見に戻れそうにないよ……)



……とうとう自分で尿が出せなくなった。
チューブを入れられ、袋に溜まった尿を、看護師さんが別の容器に移して捨てる。

…その色を見た。

赤っぽくて、濁ってて、ドロドロの血液みたいに見えた。
あの尿の中に、腎臓に溜まった砂が混じってるんだろうか…って思った。
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