あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―
第一章

見栄っ張りな臆病者

「おい朱‼何やってんだそんな所で‼」
「あ、バレた」


ドタバタと忙しない足音が一気に階段を上がってきたかと思えば、次の瞬間。バンッと乱雑に部屋のドアが開けられた。ドアを開けた人物は、白木朱(しらきしゅう)こと、朱が寝っ転がっているベットが置いてある部屋の主。上村秀俊(うえむらひでとし)。


「おかえりー」
「おうただいま……じゃねぇよ‼」


夫婦か!と盛大につっこむ秀俊に朱は、じゃあ私は新妻か。と気の無い返事で返すと、イヤ、結婚十年以上たってすっかり冷めて夫が妻の尻に敷かれている様な夫婦だ。とやけに具体的に返してきた。


「うわぁなにそのイヤに具体的なの……乙女の結婚願望削がれるわぁー」
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