Fly*Flying*MoonLight

PM2:50 一階

「……!?」
 柔らかい感触。俺の首に回された手。

(かえ……で……?)

 何か……が、身体に流れ込んできた……気がした。

 楓が唇を離す。手が、ゆっくりと落ち、そのまま床に倒れ込んだ。
「楓っ!」

 荒い息の下、楓が言った。
「……い、ま……」
「……」
「私……の、魔力を……あなた、に……」

 魔力!?
 俺がなにか、と聞こうとした瞬間、楓が叫んだ。

「シルフィード、和也さんをビルの外へっ!!」

「か……!!」
 俺の身体をつむじ風が包んだ。ふわり、と身体が宙に浮く。
「楓っ!」
 右手を伸ばした。届かない。
 そのまま、俺の身体はすごい勢いで、楓から遠ざかっていった。

***

「うっ……!!」
 心臓を押さえる。息が……苦し……

 和也さん……は、無事……

 ……意識……が……

 ガラスが割れるような音が頭に響く。

 も……う、抑えられな……


――全て、が、白、になった。
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