シークレットガール!【完】
ふと、あたしは彼から視線を外し、屋台に目を移す。
視界の至るところにカップルカップルカップル。
あぁ、あたしもこんな風になりたいなぁ………。
ふと人の顔がよぎり、自分に呆れたような乾いた笑みが零れる。
ほんと何考えてんの。ばっかみたいじゃん。
あたしには出きるはずがないでしょう?
叶えもできない夢を見るなんて、あたしらしくない。
ふぅと息をゆっくり吐き、カップルを見るに耐えなかったので、屋台の看板のみに視点を集中させた。
「…あ」
「どうしたのー?美沙ちゃん」
「焼きトウモロコシ……食べ忘れてた」
「ねぇお腹見してちょーだい」
腹?腹腹腹腹腹。
服を脱げってことか。
「不純異性行為は禁止です」
「美沙ちゃんエッチースケッチワンタッチー」
と言いながら彼は胸を隠す。
あたしはスケッチもワンタッチもしてねぇよ。
胸隠すって、乙女かよ。
てゆーか、美沙ちゃん、意味を捉え間違えた感じ?
もうほんとやだ。絶対はるるん弄ってくる。
ほら、あやつ。ニヤニヤと残念イケメンに成り下がるような気持ち悪い笑みを浮かべてやがる。
「美沙ちゃーんは意外とエロい子ー?」
はるるんにエロいとか言われたら、美沙ちゃんショックで寝込むー。
あたし達は、足を止めた。
目の前にはトイレ。目指していたトイレである。
「んなわけないでしょ。…はい、トイレだよ。お母さん見守っててあげるから、ちゃんとやってきておいで」
彼の背中を押し、トイレに行くことを促す。
「こんなお母さんは勘弁だわー」
イラッ。
「クソガキ。さっさと行けコラ」
「年上なんだけどー敬語使ってよ後輩ちゃん」
「煩い変態男」
懐かしい呼び方だねー、と爺臭いことを言い出した。
トイレ行きたいんじゃないの?
もしかして我慢してんの?それこそ痔になる原因だよ。
そんなことよりも。
焼きトウモロコシ買いに行きたい。マジで。
「はい、はるるんるんるんるん。トイレにレッツゴー。あたし、焼きトウモロコシ買いにいってくるから」
「分かった分かったー。早く終わった方が遅い方がいる場所に行く、でいい?」
「了解」
短く適当に返事をして。
あたしはボルトのごとく。
マッハの勢いで、スタートダッシュを決めたのであった。