シークレットガール!【完】
side.H
「橋本ッチじゃーん。美沙ちゃんはー?」
駅で彼女が来るのを待っていると、彼女の幼馴染み、またの名は恋敵の彼が駅から出てきた。
「うっわ、…」
「何そのむっちゃ嫌な顔」
最近の若者は遠慮というものを知らない。
てゆーか、生意気だ。
「てゆーか、美沙ちゃんはーー?」
と。聞くと、彼は俺を睨む。
「何でもいいだろ」
答えたくないのか、俺の横を通っていく。
なんかアレ。美沙ちゃんと喧嘩したってか。
「橋本くーん」
「煩い。登校の邪魔」
なんと辛辣。
「美沙ちゃんはーー?」
めげずにまた聞くと、彼は深くため息を吐いた。
「アイツが何してようと、あんたらには関係ない」
何って何。
美沙ちゃんは何をする気なんだろうか。
俺を睨んでいる彼は、どこか悲しそうに顔をしかめていて、今にも泣きそうに見えて。
「そっか」
彼の意味深な発言を掘り下げることが出来なかった。
彼女は、まるで霞のようで掴めない。
掴もうとするほど、焦るほど、彼女は変幻自在に形を変えて、逃げていく。
毎度のことだ。
終業式の日にも、ダッシュで置いていかれたし。なかなか傷ついたし。ガラスのハート粉砕されたし。
何故か、今回は胸騒ぎが収まらない。