消えてくれない

期待


毎日、アキが寝るまでラインや電話をする。

そんな奇妙な関係がしばらく続いていた。

アキも最近は彼女と上手くいってるみたいで、毎日楽しそうにしていた。

そんなある日、ある出来事がおきた。



いつものように、アキからの連絡を待っていた。

でも、仕事が終わったはずの時間が過ぎても寝ているはずの時間になってもアキからの連絡はなかった。

時々そうゆう日があったから、そこまで気にすることなくその日は眠りについた。

ピロリンピロリンピロリン

重たい瞼を開けて、まだボヤける視界で携帯を探す。

『今何時?
こんな夜中に誰?』

寝ぼけながら必死に画面をみる。

【加藤秋】

『何があったの⁈』

アキはこんな変な時間に連絡してくることは滅多にないから、何かあったんだとすぐに分かった。

慌てて電話に出る。

「もしもし?」

「ごめんな、こんな時間に。
寝てただろ?」

「大丈夫だよ?
何かあった?」

「彼女が
彼女がさ、







妊娠した。」

「へ?」

『思いがけない連絡だった。』

「それもさ、
俺の子じゃないんだ...」

「ちょっと待って...!
どうゆうこと??」

アキの言ってることが理解できなかった。

『アキの子じゃなかったら、いったい誰の子よ...』

「前浮気してたって言ったろ?
その浮気相手の男の、子供らしい...」

「でも!
...そんなの検査してみないと誰の子なんて分からないでしょ?」

「実は最近全然会ってなかったんだ。
仕事も忙しかったし、彼女の休みと俺の休みが合わなくて。
今となっては、ワザと俺と会わないようにしてたのかもしれない...」

「彼女が妊娠したって、アキはなんで知ったの?」

「彼女に相談されたんだ...
どうしようって。」

「は??」

アキの彼女の考えていることが理解出来なかった。

「なんでアキに相談するの⁈
そんなの相手の男に言えばいいことでしょ⁈
おかしい!そんなのおかしいよ!
なんでアキがそんなに傷つかないといけないの⁈」

私は怒りが止められなくなっていた。

「まだ学生だから産めないだろうし、相手の男も学生だからさ、俺にしか言えなかったんだろうな...」

「そんな!
親とか友達だっているでしょ⁈」

「俺の子供じゃないことがバレるのが怖いんだろ...
多分。」

「そんなの自業自得じゃん!」

「そうだな...
俺、どうしたらいいんだよ。」

「アキ...」

「俺好きなんだ。
あいつのこと...
こんなことされたのに。
馬鹿だよな...」

「そんな...
アキは馬鹿なんかじゃないよ。

好きなのはどうしようもないじゃない。」

アキの言葉が自分とかぶった。

好きなのはどうしようもない。

どんなに自分に可能性が無いとしても、気持ちを誤魔化すことなんて出来ない。

「スミレは相変わらず優しいよな...」

「私は
優しくなんか無いよ。」

『アキが弱ってるところに漬け込もうと思ってるんだから...』

「いや、スミレに話を聞いてもらえて本当に助かってるんだ...」

「...。
ごめん。
何も言ってあげられる事がみつからない。」

「いや、ほんとありがとう
ごめんな?起こして。」

「ううん。
いつでも連絡していいから...」

「サンキュー...
じゃあ、またな。」

「うん...
おやすみ。」


『なんでアキばっかりこんなに傷つかないといけないの?
なんで...
アキはあんなに一途なのに...
酷いよ』


その日は寝るれずに、アキからの連絡をひたすら待った。



そらからアキは本当に魂が抜けてしまったようになった。

ご飯も喉を通らなくなり、どんどん痩せていった。

「今日はちゃんとご飯食べた?」

「あまり...
夕飯は家族がいるから食べないと心配さらるけど、朝とか昼はほとんど...」

「ちゃんと食べないと身体が壊れるよ?」

「そうだな...
頑張ってはいるんだけどさ。」

「これからどうするの?」

「こうなったからには、彼女とは別れようと思ってる。」

「そっか...
私も、アキが傷つくのをもうみたくない。」

「あーあ!
なんで俺スミレじゃなかったんだろうな...。」

「なんで私?
私達は友達でしょ?笑」

アキは私達が別れてから、その話題には触れない。

まるで無かったことのように...

だから私もアキの前では忘れてしまったように振る舞うようにしていた。

「スミレはほんと、優しいよ。」

「まぁ?
友達ですからね笑」

「俺、スミレと付き合ったら、あいつの事忘れられるのかな?」

「アキと付き合うとか考えられないから‼︎」

『嬉しい!
アキに必要とされてるのは本当に嬉しい。
でも...
あの人の、誰かの代わりは嫌なの。
付き合ってたとき私はアヤカの代わりだったでしょ?
もうあんな思いはしたくない。
私を私として見て欲しい...。』



あの時“誰かの代わりでもいい”って思ってたらこんなことにはならなかった?

私期待しちゃったんだよね...。

きっとアキは私の事を見てくれるようになるって。

馬鹿だよねー

アキにとって私は一生友達なのに...。



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