MAHOU屋
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閉店まで残り三十分。
鳩時計がぱっぽと一回だけ鳴いた。
ソラはショーケースに残った最後のクッキーを眺めて唸っている。
そわそわ落ち着きのないソラとは対照的に、レインさまはソファーでくつろいでコーヒーを飲んでいる。


レインさまの作り出したアトリエには、丸テーブルと椅子がニ脚と、三人くらいが座れるソファーがあってキッチンの外側は待合室のようになっている。
古書や雑誌が壁いっぱいに並べられていて、小さな図書館のようでもある。
それらの本はチヒロのばあさまが資料として集めていたものがほとんどで、レインさまの手によってひとつひとつダンボールから棚へとしまわれていた。


「れいんー、うれないねー」
「大丈夫、来るよ。これじゃないけどね」


何かを察知したようにレインさまが呟き、その数秒後にデビルが来た。
「これ」というのはデビルのことだったようだ。


「俺さまの美形な顔に、何かついてる?」


デビルは不思議そうにチヒロとソラ、レインさまを順番に見た。


「ちがうよー、れいんがでびゆがくりゅってあてたんだよ。しゅごいねー」


ソラは「る」以外にも「す」が苦手で、ときどき「しゅ」と言う。
同じクラスの園児たちよりも、しゃべり方が砂糖のように甘い。


「そうかそうか、レインはデビルセンサーがついてるんだな」


「愛されてるねぇ、俺」と言いながらデビルはレインさまの隣にどかっと腰を下ろした。
レインさまは表情ひとつ変えずに「うそつき」と呟いた。
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