MAHOU屋
毎週月曜日は地区別下校だ。
朝と同じ通学班で帰る。
普段は学年下校で女子ばかりだから、学年が違う男子がいてくれて嬉しい。
チヒロの班は新一年生が入らなかったから、今年も二番目を歩いている。
六年生のケイヤくんが歩く、地面を踏む靴の裏に砂がついてぎゅっぎゅと音がする。
それが少し羨ましい。
自分も足元を振り返ってみるけれど、砂はくっついてこなくて、代わりにぺたぺた音がする。


チヒロが入学したばかりのとき、班の集合場所までレインさまが待っていてくれた。
これは学校の規則で、四月中は迎えに出なければならなかったからだ。
レインさまがどうしても仕事で来られないときは、何故かデビルが赤いバイクに跨りながら待っていた。


「郵便屋さん」というデビルの職業は自慢したくなる。
誰でも知っていて、誰もがお世話になるから誇らしい。
けれどデビルはとうさまではないから、自慢することができない。
「あの人お父さん?」とケイヤくんに聞かれても答えに困ってしまうし、多分ケイヤくんもチヒロに父親がいないことを知っている。
ケイヤくんは近所の話好きのオバサンの、三番目の子供だ。


こういうとき心が弱ってしまっているからなのか、ソラと同レベルで喧嘩できるデビルがとうさまなら良かったのにと思ってしまう。
けれど本物のとうさまの顔を覚えているから、家に帰ってすぐさま仏壇に向かって「ごめんなさい」と手を合わせる。
本物のとうさまがいるのに、そう思ってしまってごめんなさい。
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