MAHOU屋
「あとこれだけしかないけど、良いよな!」


デビルはやはり今日も、お肉を油で揚げたような、カラっとした笑顔をして言った。
ショーケースの中からバニラクッキーを出している。
このクッキーは昨晩レインさまが特別に焼いた、その残りだ。
しかもデビルは岩城さんと一緒に食べる気満々のようで、キッチンから丁度良いお皿を探し出してきた。
それをテーブルに置いて、無造作にクッキーを並べる。
一瞬苦笑いを浮かべた岩城さんだったけれど、遠慮なくと呟いてチヒロの前に座った。
デビルは行儀悪く立ち食いだ。
その上「チヒロ、茶」と言うので、仕方なく立ち上がり冷蔵庫から麦茶を取り出して、三人分用意した。
岩城さんはチヒロが戻るのを待っていたけれど、デビルは一足先に食べてしまっている。


「なんかこれ、牛乳食べてるみたいだなぁ」
「このクッキー、スキムミルクがたっぷり入っているみたいだったよ」
「赤ちゃんが飲むあれか?」
「それは粉ミルクだよ」


いい歳をした大人が小学二年生に指摘される。
それがおかしかったのか、岩城さんがクスリと笑い、クッキーに手を伸ばした。


相変わらず、素敵な食べ方をするなぁ。


岩城さんはまるで可愛いものをみつけたクラスの女の子たちみたいに、みずみずしく笑って食べる。
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