MAHOU屋
世の中に尊敬しなくてはならない人が三人いる。
とうさま、かあさま、そして、レインさまだ。
仏壇に手を合わせるたびに、チヒロはそんなことをいつも思っている。


とうさま、かあさまはもちろん、チヒロたちを産んだ人のことだ。
レインさま(“さま”をつけると、非常に怒るのだけれど、こっそり心の中で“さま”をつけている)は、僕たちを育ててくれている恩人だ。


レインさまの本名は<塩谷虹歩>という。
名前の<虹>を英語で<レインボー>というらしく、そこからとっている。
レインさまは決して苗字や名前で呼んではいけない。
それはレインさまが自分の名前も苗字も大嫌いで、できることならチヒロたちの苗字に成り代わりたいと以前言っていたからだ。


レインさまがソラと一緒に階段から下りてきた。
レインさまに手を引かれた妹のソラは真新しい園ジャージに身を包んでいる。


今の季節はまだ、レインさまは男の人のように見える。
もう少し暑くなると、着るものが薄くなるのか、ちゃんとした女の人に見える。
レインさまの髪は短く、体型も細身の長身だから、季節によって性別が違うように見えるのだと思う。
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