デスサイズ


「……確かに最初は正当防衛だった。だが、まだ生きていて、助かる可能性があったにも関わらず、お前は明確な殺意を持って、娘を殺した」

みどりを睨む黒斗の瞳が、赤く輝いた。


「確かにお前の身の上は同情出来るもので、一般的には“可愛そうな人”なんだろう。……だが、今のお前は娘を殺した、ただの殺人者だ」



グワッ



物凄い勢いで、鎌に刺さっているみどりの身体が振り回され、そして――





グワシャッ





肉が潰れる生々しい音と共に、勢いそのままに壁へ叩きつけられたみどりの首が衝撃に絶えきれず、破裂した。




身体を繋いでいた首が無くなり、みどりの頭が床を転がる。

ただの肉塊となった身体は、膝からグニャリと崩れ落ちる。

破裂した首は飛び散り、辺りに赤黒い肉片と、粉々に砕けた骨が、無造作に散らかっている。

首が叩きつけられた壁には、トマトが潰れたような大きな赤い染みが広がっている。



「……………………」


何の感情も込もっていない眼で、親子2人の遺体が転がる凄惨(せいさん)な現場を見渡すと、黒斗は踵を返して、開いた黒い穴を潜ろうとする。



『……ザ、待っ、ザザザ、……ザ、』



床に投げられたままのみどりの携帯からノイズ混じりの声が聞こえて、黒斗は足を止めた。



『あたし……ザ、ザザー、あんた達が最初で、ザザッ、最後の友達、ザー、良かった……あり、がとう……』


「……橘と佐々木にも、遺言として伝えておく」


振り返らずに黒斗が言うと、携帯から音が消え、画面も電源が切れたように真っ暗となった。



「…………母親に依存しすぎて、離れることが出来ずに愛情が憎しみへ変わっ た娘……。手に入れた自由に酔いしれ、己のことしか見えなくなった母親……。最初は互いに思いあっていたのに、いつ、何処ですれ違ってしまったんだろうな」




─呟かれた言葉は、果たして誰に向けられたものだったのだろうか。

< 201 / 331 >

この作品をシェア

pagetop