シルビア
「黒木ちゃん、おはよう」
「あっ、おはようございまー……ってあれ!凛花さん、今日スカートじゃないですか!」
出勤して早々、見慣れたいつもの格好と少し違う私の服装に、黒木ちゃんを始め女の子たちの目は止まる。
「た、たまにはと思って……どうかな」
「いいじゃないですかー!脚綺麗なんだし、いっそもっとミニとかいいんじゃないんですか?」
「あれ、髪もおろしてますね」
皆に一気に視線を向けられ恥ずかしくなってしまうものの、好感的な反応に悪い気にはならない。
いつも束ねているだけの髪も、毛先を巻いて
ほどいただけでも大分印象が変わるらしい。
照れ臭く前髪を整えた私に、女の子たちはにや〜と何やら楽しそうに笑う。
「服装も髪型も変わって……もしや凛花さん、恋ですか〜」
「恋ですよね〜」
「は!?」
って、恋!?なにをいきなり!?
「いやいやいや!違うから!!恋とかそういうのじゃないから!!」
「またまたぁ、凛花さんわかりやすーい」
だから違うってば……!
必死に否定をすればするほど、あやしいのだろう。「もう!」と声を大きくする私に、皆はきゃっきゃと笑った。
「おはようございまーす、三好さんいますー?……って、なんだか楽しそうですねぇ」
「あっ、宇井さん。おはようございまーす」
するとフロアにひょこっと姿を現したのは、いつも通り、白いワイシャツに紺のカーディガンといったゆるい格好の望。
彼は女の子たちの笑い声を聞きながら、嬉しそうに笑みをこぼす。
「女の子の可愛い笑い声はいいねぇ、和むねぇ。で?なににそんなに盛り上がってるの?」
「それが、凛花さんが恋……」
「わー!!言わなくていい!違う!違うから!!」
軽いのりでなにげなく問いかけた望に、言いかけた黒木ちゃんの口を右手で塞ぐと、左手で必死に望をフロアから追い出す。