シルビア



「黒木ちゃん、おはよう」

「あっ、おはようございまー……ってあれ!凛花さん、今日スカートじゃないですか!」



出勤して早々、見慣れたいつもの格好と少し違う私の服装に、黒木ちゃんを始め女の子たちの目は止まる。



「た、たまにはと思って……どうかな」

「いいじゃないですかー!脚綺麗なんだし、いっそもっとミニとかいいんじゃないんですか?」

「あれ、髪もおろしてますね」



皆に一気に視線を向けられ恥ずかしくなってしまうものの、好感的な反応に悪い気にはならない。

いつも束ねているだけの髪も、毛先を巻いて
ほどいただけでも大分印象が変わるらしい。

照れ臭く前髪を整えた私に、女の子たちはにや〜と何やら楽しそうに笑う。



「服装も髪型も変わって……もしや凛花さん、恋ですか〜」

「恋ですよね〜」

「は!?」



って、恋!?なにをいきなり!?



「いやいやいや!違うから!!恋とかそういうのじゃないから!!」

「またまたぁ、凛花さんわかりやすーい」



だから違うってば……!

必死に否定をすればするほど、あやしいのだろう。「もう!」と声を大きくする私に、皆はきゃっきゃと笑った。



「おはようございまーす、三好さんいますー?……って、なんだか楽しそうですねぇ」

「あっ、宇井さん。おはようございまーす」



するとフロアにひょこっと姿を現したのは、いつも通り、白いワイシャツに紺のカーディガンといったゆるい格好の望。

彼は女の子たちの笑い声を聞きながら、嬉しそうに笑みをこぼす。



「女の子の可愛い笑い声はいいねぇ、和むねぇ。で?なににそんなに盛り上がってるの?」

「それが、凛花さんが恋……」

「わー!!言わなくていい!違う!違うから!!」



軽いのりでなにげなく問いかけた望に、言いかけた黒木ちゃんの口を右手で塞ぐと、左手で必死に望をフロアから追い出す。


< 71 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop