シルビア
『恋して格好が変わった』なんて望に聞かれたら、まるで私が望のことを好きみたいじゃない!
変な誤解を避けるべく、にぎやかな皆の声を遮るように私も廊下に出ると、バタン、とドアを閉めた。
望とふたりとなった廊下。まばらに人が横を通って行くけれど、私たちを気にとめることなく歩いて行く。
「あれ、そういえば今日スカートなんだね」
「え!?え、えぇ、たまには……その、気まぐれで」
「気まぐれ、ねぇ」
目の前に立ったところで気付いたのだろう。望は私の足元をじーっと見る。
う、うぅ。見られている。
太くなったとか思われていたらどうしよう、ストッキング伝線していないよね?大丈夫だよね?
変に考えすぎて不安になってしまう。
「な、なによ」
「いや、いい脚だと思って。エロいねぇ、触っていい?」
「セクハラ!!」
こちらの不安もなんのその。へらっと笑って言われたことに、私は思わず足元を手で隠した。
「本題は?なにか用?」
「あ、そうそう。展示会のディスプレイ案出来た?『案やテーマだけでもそろそろ報告がほしい』って、うちの上司が」
「うっ!」
げ。展示会の話だった。
その話を聞いた途端に渋くなる私の顔を見て、望は首を傾げる。
「あれ、もしかしてまだ出来てない?」
『出来ました』、と言いたいところだけれど……私は言葉なく小さく頷く。
そう、先日展示会にも行って、あれだけ見て回って、展示の仕方やなんとなくのイメージは湧いたものの……図に表すほどはまとまっていない。
つまり、まだディスプレイ案は出来ていない。