ユウウコララマハイル
両親がいなかったカケルにとっての母親代わりだった祖母は細かいことは気にしない豪快な人だった。
カケルは外見のことでからかわれることが多く、それさえも笑い飛ばすような明るい性格だ。
そしてとても夢見がちな人でもあった。


この外見は祖母の父、カケルにとっては曾祖父譲りだという。


曾祖父は全てが謎だった。
出生はもちろんのこと、曾祖母と出会うまでの記憶もなかったらしい。
曾祖父の外見は異国の人であったし、時代が時代だったから、隠れるようにして暮らしていた。
そんなこともあって祖母が産まれたとき、外見が日本人そのもので大層喜ばれたそうだ。
曾祖父はその翌年に亡くなり、彼の死体は泡のように消えてしまったという。
そして骨の代わりに残ったのが鳥のような真っ白い羽根だった。


その話がどこまで本当かはわからない。
曾祖父はただ単純に記憶喪失だったのかもしれないし、羽根も白鷺だったり文鳥だったりが偶然落としていったものかもしれない。
そんな現実的なことを加味せず曾祖父を語る祖母は少女のようでもあった。


そんな曾祖父が残した手記を譲り渡され、教科書のように読まされ続けたカケルは、当然のように“アスズシキダフマナク”がわかる。
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