ユウウコララマハイル
中村は携帯電話で誰かと話しているようだ。
電話口に手を当てて殺傷能力がある視線をカケルに向けている。


「このスマホ防水じゃないから、あと一分でお風呂から出て」


申しわけありません、こっちの話です。
先ほども話しましたが、こちらからかけ直しますよ。
電話代ももったいないですし。
え、そうですか。
では、はい、古沢が着替え終わるまでおつきあいしますね。


電話の主は自分に用があるらしいと、袖を通しながら察する。
それにしても中村の声は接客モードで、いつもより一段と声が大きく高い上に丁寧だ。
都内で一緒に働いていたときはもっと淡白な印象だったけれど、書店に勤めだしてから人柄も柔らかくなった気がする。


中村はリビングで窓の外を眺めながら話していた。
カケルにスマホを渡すとまだ調理中だったのかキッチンに戻った。


「代わりました、古沢です」


そういえば相手は誰だったか聞いていなかったと、相手の声を注意深く探る。


『古沢カケルさんですか?』


ゆったりとした深い声にはいと応える。


『金城ハルと申します。いつも孫たちがお世話になっております』
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