ユウウコララマハイル
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おとといの晩、徹夜でくまのぬいぐるみを修繕した。
翌日は定休日だったので寝て過ごし、そして今日カフェの混雑時、ランチタイムを終えてからマスターに渡そうとしたのだが相手にされない。


「今日これから人に会う約束があるんだよね。今からならゆっくり話が聞けると思って」
「いいんですか? 今日マガジンとサンデーの発売日ですよ」


マスターはジャンプのほかに、他出版の少年誌を中村の書店で定期購読している。
やはりカフェの営業時間中に抜け出して買いに行っている。


「今日はしょうがない、我慢するか!」
「因みに明日行っても中村いないですからね。アイツ今晩棚卸しで朝までいないですから、当然明日休みなんです」


マスターは中村がなぜだかお気に入りだ。
マスターは幼い頃の中村を知っており、その成長に感慨深いものがあるらしい。


「じゃあ、明後日買うことにする」
「それはそれでいいんですけど、だから、これ受け取ってくださいって」


マスターはカウンター席に座って珈琲時間という雑誌を捲っている。
お客さんも数組残っているし、女性向に改装された店内で少年誌を広げるのは気が引けるらしい。


「だからこれから人に会うんだって。ほら、この間カケルが販売スペースのディスプレイを改造しただろ? あれが好評でね、そこに主人のポストカードを置いてくれないかって問いあわせがあったんだよ。奥さんがね、たまたま持っていたものを見たんだけど、本当に息を呑むように綺麗なものだったんだ。写真なんだけどね、目線が人と違うっていうか。見る?」


疑問系で聞いているくせに、これは「見ろ」という半ば強制だ。
雑誌の栞代わりに使っていたポストカードは四葉のクローバーだった。
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