気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「俺が払うよ」
「えっ、だって……このデートが……あのことを黙っておいてくれる交換条件なんでしょ?」

 戸惑い顔の凜香を見て、透也が片方の口角を引き上げて笑った。

「確かにそうだけど、俺は凜香とデートがしたいだけで、凜香に奢らせたいわけじゃない」
「そ、そう……。ありがとう」

 透也が立ち上がったので凜香も続いた。通路を歩く彼の広い背中を見て考える。

(私とデートがしたいって……どういう意味なんだろう。透也くんならデート相手はよりどりみどりだと思うのに、どうして私なんか……?)

 透也が会計を済ませ、店を出るときもドアを押さえてくれた。

「ありがとう」

 透也は社長の御曹司というだけでなく、その容姿からも〝ほかの部署の〟女子社員の間で人気がある。仕事以外ではほかの社員とあまり接点を持たない凜香だが、彼がどこそこの部署の誰それと付き合っているらしい、という噂はときどき耳に入ってくる。今現在はフリーらしいが、スマートにレディ・ファーストをしてくれるくらいだから、付き合ったら楽しいかもしれない。
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