センターマイクの君へ(仮)

「トリ…」

「トリにする?その名前最近呼ばれてないから振り返れるか不安だけど…、毎日聞いていけば大丈夫かな!」

 まるで昔を思い出すように上を見上げる鳥井

「私のことは?」
「え?ルイちゃんのこと…?あー、ルイちゃんはルイちゃんがいいな!それに彼氏さんとかに、”ルイ”て呼んでるのバレたら悪いしね」
「彼氏なんていないけどね」

 少し話しただけ。でも、ルイは少しずつ打ち解けてきたように思えた。
 彼氏がいないことも、呆れた顔で言えちゃう。

「え?!いないのー?や、でもすぐ出来るかもしれないし…ルイちゃんはルイちゃんだよ」

 軽く笑った鳥井の顔に、心なしかルイはドキっとしてしまった。
 それから鳥井はいろんな話をルイにした。芸人さんだけに、話すことは面白く時間がたつのがあっという間だった



 7時になりテーブルには夕食の用意が出来ていた。ルイは鳥井を手伝い食器などを並べた。

「ハル起してくるよ」

 エプロンを脱ぐと早々と兄の寝室へと去っていった鳥井。
 後姿を目で追い、見えなくなってからドスンとソファーに座った。

 テレビをつければ、バラエティー番組から笑い声が聞こえてくる。


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