センターマイクの君へ(仮)

…3人?

 ルイは兄の言葉を理解できず、そのまま硬直してしまった。


き、聞いてないよ…多分。


「もー、ハルのことだから言ったつもりになって言ってないんだろう?」

 男はクスっと笑いながらルイの前に立ち、わざわざ背の低いルイに目を合わせるかのようにしゃがみ

「鳥井 忍です。よろしくね」

 ニカっと微笑み挨拶をされルイは硬直状態から逃げ出せた

「ルイです…」
「うん、知ってるよ!ハルから聞いてるからね」

 ハルと言うのは兄の名前。

「しのぶはそれでも芸人なんだぞー!ちっとも売れないけどな」

 寝転がる兄は鳥井の簡単な紹介を始めた。
 鳥井は売れない芸人であり、今はバイトで生活を維持している。だが、バイトでは生計が立たず家賃を滞納してしまい、あげくに小額ではあるが借金をしてしまった。家は追い出されるし借金は増える一方だし…。困り果て、親友である兄に相談したらしい。家がなくなってしまい今は仕事場の劇場で寝泊りをしているらしいが、ずっとあそこで暮らすわけにもいかない。そこで兄はこの家で暮らすことを勧めたらしい…。

「借金は?」
「俺が払ったよ!まだ50万だったから…今止めておけば苦労しないと思ってな~」

 バイトで返してはいたがそれはほぼ利子分しか返しておれず、それでもお金が必要になりまた借りたりとしていたら始めの10万が50万に増えたとか…

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