恋愛ドクター“KJ”

“ 関係 ”

 KJ、そしてアスカの視線の先には、ビジネスマンとOLといった感じの男女が並んで立っていた。
 その二人の背中が見えた。
 
 「あの二人の関係って‥‥。そんなの分かるわけないでしょ。
 たまたま見かけた二人なんだし。何か分るっていうの?」
 アスカは、気持ちを素直に言葉にした。

 アスカが説明をするまでもなく、KJにもアスカにも、そして一也にとっても初めて見かける男女だ。それも偶然にホームが一緒になっただけの二人なのだ。
 そんな男女の関係がどうかなんて、分かるはずもない。

 「そうかな。少しくらいは分ることもあると思うけど‥‥」
 KJがそう促すと、アスカは改めて二人の背中を観察した。

 二人の後ろ姿は、仕事の途中か、もしくは仕事帰りのビジネスマンとOLといった風だ。
 というのも、男性の左手に握られたアタッシュケイスの大きさとデザインから、どこかに遊びに出かけた帰りとは想像できない。
 さらに。
 左となりに並んだ女性の左肩にも、大き目のバッグが掛かっていた。荷物はたっぷり入るものの、オシャレとは無縁のものだ。

 そのとき。
 三人に背中を向けていた男女が向き合ったことで、それぞれの横顔を確認することができた。
 年齢は、男性が30代の半ばで女性は20代の後半だろうか。
 断言はできないが、アスカの目には、そう映った。
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