恋愛ドクター“KJ”
 「僕がアスカにグーを出させた‥‥」
 そのKJの言葉は、あまりにも現実離れしていた。

 「ちょっとまってよ。
 『KJが私にグーを出させた』ってどういうことよ。
 ワケわかんない!」
 
 アスカの言い分はもっともだった。KJの説明を、はいそうですかと、納得しろという方にムリがあった。

 「そうだよKJ。アスカのいうとおりだよ。あのとき、KJは、アスカにグーを出せなんていってなかったぜ」
 一也がアスカを援護した。

 「いや、グーを出させたっていうのは、僕がアスカにお願いしたってことじゃなくて、アスカがそう行動するよう、僕が仕掛けたんだ」

 できるだけ分りやすいようにと、それを意識しながらKJは説明を続けた。
 「アスカが僕にジャンケン・ゲイムを持ちかけたとき、アスカは、初めての相手ならクセや何かを見抜かれていないから、負けっこないって考えたよね。
 少なくとも連敗は有り得ないって。だから3回勝負を考えたんでしょ」
 KJの話を黙ったまま聞いているアスカは、ゆっくりとうなずいた。

 「でもね、ジャンケン・ゲイムは、初めてとか経験があるとか、そんなのは関係ないんだ。大事なのは感情のコントロールなんだよ。
 感情を動かされたものは負ける。理性を失わないものは勝つ。
 だから、僕は、わざとアスカが怒りそうな言葉を使って、口調も変えて、仕掛けたんだ」

 「えっ? じゃあ‥‥」

 「そう。勝負の前に、『顔がサルみたい』とか『サルに負けっこない』とか、繰り返していったでしょ。あれって、アスカを怒らせるための作戦だよ」
 
 そこまで言うと、またひとくち三ツ矢サイダーを飲んだKJは、より専門的な説明を始めた。
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