恋愛ドクター“KJ”
 「うん。じゃあ、そこから電車内での様子までを振り返ってみるけど、ホームに立っていたとき、男性は女性との間にアタッシュケイスを持っていたんだ。
 そして、電話をかけたとき、最初は会社で、次にレストランだったはずだけど、どっちも、僕たちには背中を向けたままだったよね。
 となりの女性には顔を向けていなかった。
 だから、となりにいた女性は、男性の横顔を見ていたことになる。
 そうでしょ」

 アスカには、KJが何を言いたいのかは分らないが、説明そのものは正しかった。
 「そうね‥‥」

 「アタッシュケイスだけなら気にならないけど‥‥。
 もし、男性が、女性のことを気に入っているなら、電話をかけるときには女性の顔を見ながら掛けるはずだよ。
 少なくとも、レストランの予約の電話は女性の顔を見るよ。
 だって、好きな人を喜ばせたいから。
 君のために、レストランを予約しているんだと、伝えたいからね」

 ≪そう言われれば、そうね‥‥≫
 アスカは、肯定の顔でうなずいた。

< 37 / 59 >

この作品をシェア

pagetop