君の隣





私は、最近、自分の事で気付いた事がある。



私は、いつも先生を目で追っている。





ある日・・・。


寅次郎「あ・・・。おなつ。」



スッと先生の指が私の頬を撫でる。




なつ「なっ・・・。せん・せ・・・い。」



先生は、微笑んで、顔が近づいてくる。



目をギュッと瞑ると・・・。



寅次郎「これ何だろう?取れない・・・。墨にしては、少し青い・・・。」



なつ「えっ?・・・。」



先生が触れていた所を鏡で見ると、青い色が付いている。



これは・・・。野原を走って転けた時に、そういえばこの色の花の上だった気が・・・。




なつ「ははは花です。」


至近距離で先生はずっと、私の頬を撫でている。



私は、心の臓が壊れるんじゃないかと思うくらい、胸が高鳴っていた。



寅次郎「そっか。怪我とかじゃないんだね?」


なつ「はい!」


寅次郎「それなら良かった。」



先生は、私の頭に、手を置いて、ポンポンとして、離れていった。



なつ「はぁ・・・。心の臓がおかしくなるかと思った・・・。先生は、何も気にしていないし・・・。私だけか・・・。」


こんな風に、先生に、心を揺さぶられるのも度々ある。





はぁ・・・。最近は、先生の事を一日中考えている事も多い。



これって、そういう事だよね・・・。きっと・・・。





私、先生に恋してるんだ・・・。




綺麗な格好でもしてみようかな・・・。




私は、いつも、男の格好に、羽織を羽織っていた。



一番多いのは、岡っ引きの格好だ。動き易さ重視だ。




もしくは、男の袴を着たりしている。




とにかく、おなごの格好は、潜入の必要がない限りしない。




だから、男と間違われる事も多いのだが・・・。




なつ「こんなんじゃ、おなごとして見てもらえないか・・・。でも、ずっと、この格好をしていたのに、いきなりおなごの格好をするのもなぁ・・・。はぁ・・・。」




この時ばかりは、つくづく、自分の生業を恨む。





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