君の隣
奇兵隊誕生!





しばらくして・・・。





高杉「なつっ!」




この声は!






なつ「高杉っ!」




その姿を見たら、涙が溢れ出た。




高杉「お前・・・っ。何やってた?」



なつ「で・・・。伝令係・・・。凄く強いの・・・っ。次々、こっちの船は大破して沈没だし・・・。砲台は壊されるし・・・っ。死者も・・・っ。」



高杉「泣くなっ!今、泣いて、何になる!お前に案内して欲しい。白石殿の所だ。」




なつ「金銭的な事?」



高杉「あぁ・・・。支援を頼む。」




なつ「わかった!白石さんとは凄く仲良いから、きっと、大丈夫!」



高杉「お前・・・。また尻軽か!」



なつ「何で、そうなるのよ!」





私は、高杉を連れて、下関の西端、竹崎浦の白石さんを訪ねた。










なつ「こんばんは!おみよちゃん!白石さんに会いたいの。急を要すること!」





おみよちゃんはここの女中で、ここに通っている間に、仲良くなった。




おみよ「おなっちゃん!わかった!」






そして、部屋に通される。





白石「おなっちゃん!どうしたんだい?こんな夜更けに・・・。」



なつ「ごめんなさい。こちらは、大組の高杉 晋作様。白石さんにお願いを聞いて欲しくて、来たの。」




高杉は、奇兵隊という部隊を作りたいから援助してくれと申し出ていた。




白石「私は、尊皇攘夷派です!それに、おなっちゃんの願いなら喜んで、援助させてもらいます!」



高杉「感謝する!」



なつ「ありがとうございます!今度、お座敷を用意します!」



高杉「お座敷とは何だ?お前・・・。まさか・・・。」



なつ「芸妓で、もてなすんだよ?」



すると、高杉が、盛大な溜め息をつく。




高杉「はぁ・・・。お前は、本っっ当に、尻軽だなっ!」




なつ「はぁ?意味わかんないし!」



高杉「お前、他の前では、俺のことを敬えとあれほど言ってたのに!忘れてるぞ!」



なつ「あ・・・。仕方ないでしょ!高杉が、怒るような事を言うからでしょう!?」




白石「お二人は、恋仲で?」



私達は固まる。




なつ「ち・・・。違います!た・だ・の・腐れ縁です!」



高杉「こんな男女、誰がっ!」




白石「はははっ。そういうことですか。」



白石さんは、うんうんと首を頷ずきながら、ひとりで嬉しそうに納得している。




なつ「白石さん?勘違いしないで下さいね?この人とは、なーんにもないんです!」



高杉「そうです!こんな男女が相手だなんて、恥です!」



なつ「私の方が、恥よっ!」



高杉「お前の身分でよく言えたものだな!」



なつ「はぁ?高杉だって、脱藩してるくせに、偉そうなこと言わないでっ!」



高杉「はぁ?お前、誰に向かって言ってる!」




なつ「脱藩浪士、高杉東行!このザンギリ頭っ!」





本っっ当にムカつく!





白石さんは、肩を振るわせて笑っていた。



白石さんと、弟の廉作さんも、会計方として、入隊した。






そして、6月7日から8日にかけて、白石邸を本陣として、奇兵隊を発足した。




なつ「ねぇ。高杉。奇兵隊ってどういう隊?」




高杉「奇兵隊は、武士、農民、町民関係なく入れる。身分ではなく、力量重視だ。そして、こちらからは誘わないし引き抜かない。希望者のみ。戦うのは、自分の得意分野。洋式、和式どちらでも何でも良い。」




なつ「へぇ。面白い。でも、あれだけ身分にこだわる高杉が、どういう風の吹き回し?」



高杉「まぁな。自分の国は自分で守れという事だ。武士だけだと、一握りの兵にしかならんし、こういう時に爆発する農民一揆も外に向けられるだろう?」






なつ「なるほど!私も入隊希望しても良い?」




高杉「あぁ。お前には、頼みたい事がある。奇兵隊隠密隊長になって欲しい。」



なつ「隠密隊の隊長?」



高杉「あぁ。お前みたいなのが、増えたら、どんどん情報が集まる。」




高杉は、認めてくれてるんだ。私の腕を・・・。




なつ「かしこまりました!お受け致します!入ってきた人を選別していい?」



高杉「あぁ。」



なつ「ありがとう。」




私は、ギュッと高杉を抱きしめてしまった。




おなごの私が、隊長を任されるなんて!夢みたいだ!




そして、6月27日。



高杉は、総(督)官に任命された。




どんどん、奇兵隊希望者は増えていった。




私は、疑問に思っていた事を聞いた。





なつ「ねぇ。高杉?何で奇兵隊っていう名前なの?」




高杉「物事には、“正”と“奇”がある。戦いもまた、しかりだ。正と奇、この二つを使い分けれるものが、勝てるというわけだ。」




なつ「なるほど。なんか・・・。高杉、格好いいね!」




何気なく言った私の言葉で、高杉は、真っ赤になった。





高杉「お前に言われなくてもわかってる!」



可愛い・・・。そう思った。



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